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list 生演奏のチカラ

大植英次指揮大阪フィル「マーラーの交響曲第3番」は希に見る名演だった。
昨夜の興奮が未だに覚めやらない。

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この曲はギネスブックに載るぐらい長大で、楽章は6つもあり演奏時間は100分を超える。オーケストラは変則4管編成、ホルンは8本、打楽器奏者は総勢7人態勢でティンパニは2セット2名。舞台裏での演奏もあるし通常以上の大編成。それに加え、後半の二楽章にはアルト(メゾソプラノ)の独唱者が登場し、内一楽章だけに女声合唱と子供の合唱が入る。もちろん途中に休憩などはない。曲自体の評価は様々で、それだけ大袈裟な編成を仕立てたにも関わらず「支離滅裂」とか「作った曲を無理矢理組み合わせただけでムダに長く脈絡がない」という辛辣な批評もある。しかしボク自身マーラーの実演ではこの曲を一番多く聴いているし、マーラーのCDコレクションもこの曲が一番多い。相当好きということだ(笑)。普段スタジオ録音されたCDで聴いているとどの演奏も端正にまとまりオーケストラもミスなく美しい。しかし、生演奏の場合は「こんなに過酷な曲はないよな」といつも思わせられる。どの楽器どのパートも緊張の連続だが、特にホルンをはじめとする金管楽器群は重要で、強奏から微弱音まで繊細で微妙な表現力が求められ、めまぐるしく展開する曲調のツボツボで他の楽器群とのアンサンブルの核を担う。しかし突然単独のソロも現れて、そこがまた曲全体の出来不出来を大きく左右するキモだったりもする。いうなれば全編ハラハラドキドキの連続で、あのベルリンフィルをしてもノーミスというワケにいかなかったのが現実だ。しかしこんな大曲の生演奏では多少の難点はあっても聴き手に迫る音楽自体がブレないことが一番大切。昨夜の大阪フィルはまさにそれだった。所々ミスはあったにせよ、醸し出す音楽の明快な方向性と演奏の出来の一致がそれを凌駕した。当然そここそが指揮者の実力。まさに大植英次の素晴らしさだ。
何度も言っているが、指揮者がどんな音楽を創りたいのか不明瞭だと演奏するオーケストラは機能しない。となると聴く我々にも何も伝わらない。演奏の良し悪しは全て指揮者が握っている。大阪フィルの公式ブログによると、今回のリハーサルは3日間。1日は合唱のみだったからオーケストラとは2日だけ。10年間この楽団の音楽監督として築いた関係があるにせよ、この大曲をこの完成度まで導いた実力は目を見張るものがある。指揮者とオケは「練習が8~9割」と言われる。つまりリハーサルで自分の頭に描く音楽をオーケストラにどれだけ伝えられて意識統一を図れるかが勝負。昨年、佐渡裕がベルリンフィルに初登場した模様を伝えたテレビ番組で見たように、ベルリンフィルの場合だと2日間それも6時間でその作業を終えねばならない。不完全な状態で本番を迎えて上手くいく保証はない。だが「8~9割」と言われる理由は、残り1割程度に「プラスα」を含んでいるということでもある。この部分をマイナスでは無くプラス方向に導き、さらに「α」を強烈に体感させられるか否かが指揮者の才能。見方を変えれば、リハーサルで8割方仕上げて本番で120%引き出すことの出来る指揮者が本物といえるのかも知れない。

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大植英次の名前を初めて聞いたのは15年くらい前。ミネソタ管弦楽団とのHDCD(高音質CD)が話題になって数枚購入。当時から海外での評価がとても高く注目していたし、朝比奈隆を失った大阪フィルが「音楽監督」として招聘したことももちろん知っていた。大阪フィルは朝比奈時代ベートーベンやブルックナーなどドイツ作品に特化したオーケストラとも言え、一時期ボクは追っかけのように(笑)何度も聴いた。だから朝比奈隆亡き後の大阪フィルを敢えて遠ざけていたところもあったのだ。今回マーラーの3番というプログラムに惹かれて、ついに久しぶりに聴く機会を得た。メンバーもぐんと若返り、以前以上に緻密なアンサンブル能力と自在性を兼ね備え、別種の風格が増した印象を受けた。当然これが大植氏の成果と言えるだろう。彼の、感情を剥き出しにするような開放的な表現手法が十分染み渡り、昨夜のマーラーは実に「歌心」溢れる明確な方向性が堪能できた。特に終楽章、これまでの頑張りで油ぎれ寸前の感はあったが(笑)、指揮者の意図する緩急自在なフレージングをオケ全体で完璧に「歌い切った」様は奏でる音以上に雄弁で誇らしげだった。強烈な「朝比奈色」から脱皮し、新たに進化した大阪フィルに出会えたのが、この曲のこの演奏だったことが感激をひとしおにした。

そんな大阪フィルも、近年、例の橋本行政の文化事業助成金削減の煽りを受け財政難に晒された。ファンの熱い支援により何とか維持存続はしたが、今回オーケストラのメンバー表を見るとかなりの数のエキストラ(臨時楽員)が名を連ねていた。大編成を要するのでやむを得ないことを差し引いたとしても自前の数が異様に少ない。正規雇用を減らして非正規雇用で穴埋めとは「関西の至宝」「名門オーケストラ」の名が泣くというもの。悲しい話だ。



昨年、オーケストラは違うが佐渡裕の指揮で同じ会場で同じ曲を聴いた。とても不満の残る演奏だった。小澤征爾に認められてバーンスタインの弟子になった経歴は2人ともよく似てる。佐渡さんは京都出身、大植さんは広島。共に関西をベースにご活躍。師匠もオハコだったマーラーに関してはちょっと実力差が出たね(笑)。大植さんはもっともっと評価されるべきだ。
何を聴いても「素晴らしい」としか言わないカミさんが今回は「同じ曲とは思えないっ!」と驚いた。すぐ後ろの席で聴いていた老婦人も「他人にヘンな曲と言われて来たけど、充分元気を頂きましたよ」と声を弾ませた。
偏った知識や思い込みのないフラットな人間の評価が一番正しい。

音楽は本当に素晴らしい。
生演奏を聴ければもっと素晴らしい。
素晴らしい時間だった。





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【2012/05/11 15:52】 音楽 | track back(0) | comment(0) |
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