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list マゼール逝く

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崇拝する指揮者、ロリン・マゼールがこの世を去った。

彼についてはこの日記に再三登場しているので詳しい紹介は無用と思う。
1930年生まれ。日本的に言えば昭和5年生まれ。

亡くなる直前は体調を崩していて、5月のボストン交響楽団との来日公演は実現せず指揮者が交代した。しかし昨年春にミュンヘンフィルと来日したし、精力的な活動スケジュールは衰えを感じさせなかった。ボクが最後に実演に接したのは2007年、西宮の芸術文化センターでのトスカニーニ交響楽団公演。その前年に同じホールでニューヨークフィルとのコンビを聴いていたのでこの2年連続が最後となった。その後はNHK交響楽団に客演したのをテレビで観たし、昨年春のミュンヘンフィルも無理をすれば聴きに行けたが、プログラムに惹かれるものがなく行かなかったのだ。
と言うのも、実は老齢に達したマゼールに「新しさ」或いは「円熟」を期待することが無いからでもある。大家と呼ばれる指揮者や演奏者でも、多くは晩年には円熟の極みに達し、神懸かった演奏を連発することがあるが、マゼールに関しては、既にと言うか常にと言うか「完成」されており、常に表す音楽の次元が高く、それ以上の期待が持てない気が何となくするのである。
2006年にニューヨークフィルの演奏に触れたとき、楽団を上手くドライブしていたのが印象的だった。
マゼールは自分のタクトに従わざるを得ないように絶妙な指揮をする人で、スコアに書いてある音を全て振っているかのようなバトンテクニックは、オーケストラ側に曖昧なズレやミスを許さない。それは各楽器に的確に「キュー」を出すというありがちなレベルではなく、彼の一挙一動が完璧な「音楽」なのだ。つまり、彼の指揮が完全にスコアを見通しており、観客は彼の指揮を見つめているだけで音楽が理解出来るといってもよい。若い頃は特にそれが色濃く、どんなオーケストラでも彼の思い描く音楽が完璧に表れ出る感じだった。他の指揮者がやるととても大変そうに見える難曲でも、マゼールの指揮で聴くととてもわかりやすく交通整理され、曲の構成が具になり、複雑さはむしろ意味深く味わいを醸し出す。それをいとも簡単に実現する爽快感は驚きと感動以外生まない。
世界の名だたるオーケストラの指揮者を歴任してきたが、何処でも長くその地位に留まらないのは、他の指揮者が10数年かかるところを、数年でゴールに行き着くからではないかと思う。
高齢で今さらながら名門オーケストラの音楽監督に就任したという意味もあるのだろう。ニューヨークフィルとの演奏は、それまでより2、3歩控えた感じで、よく言えば「大人な」スタイル。悪く言えば「毒気が抜けた」感じがした。もちろん演奏の要はブレないが、高級車を余裕でドライブしている感じ、、、。以前のように、中古車だろうが、1600ccだろうが超高級車であろうが、常に最速タイムを叩き出すような「凄み」を感じることはもはや無くなっていた。まあ、年齢も年齢。当然と言えば当然か、、、(笑)。


ボクが初めて彼の実演を体感したのは1978年。
大阪フェスティバルホールでのクリーブランド管弦楽団公演。
プログラムは
キューバ序曲(ガーシュイン)
展覧会の絵(ラヴェル版)
交響曲第6番「悲愴」(チャイコフスキー)

一曲目から度肝を抜かれたのは言うまでも無いが、ここでアクシデント(笑)。
二曲目を振るために出て来たマゼールは、観客にお辞儀してオーケストラに向き直ると、低弦(チェロ、コントラバス)に向かって指揮棒を構えたのだ。しかし二曲目「展覧会の絵」の冒頭はトランペットのソロ。明らかにチャイコフスキーを振ろうと勘違いしている。いつまでたってもチェロ奏者たちは弓を構えず、それでも指揮者が気づかないので、トップ奏者が控えめながら首を小刻みに横に振って気付かせようとする。けっこう時間がかかったが、ようやく気付いたマゼール。慌てることなく、即座にトランペットに向かって指揮棒を大きく振り上げ曲が始まった。「展覧会の絵」が圧倒的名演だったことは言うまでも無い(笑)。

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当時48歳。見かけはこんなだった。

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その後、東京に居を移したボクは「追っかけ」よろしく、来日する度ほとんどの公演に足を運んだ。82年、クリーブランド管との再来日とフランス国立管弦楽団との圧巻「幻想交響曲」! その後ウィーンフィル、バイエルン放送響と何度か来日。

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何せ、10歳で指揮者デビューしてアメリカの主要オーケストラに客演した「神童」だった人。驚異的な記憶力でスコアはどんな難解なものでも完全暗譜。だから「音を全て振る」指揮が出来た。

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ヴァイオリン奏者としても「天才」だった。



天才だけに、若き日々から晩年まで録音の数も膨大。
ただ、やはりレコードより「ライヴ」の人。
「実演に触れなければ彼のスゴさはわからないよ」と言い続け、マゼールファンを少しは増やせたかな?(笑)

あえて大好きなレコードを挙げるなら何と言ってもこれ。

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これ以上の「幻想交響曲」を聴いたことがない。
オーケストラは違うがフランス国立管弦楽団との演奏は未だに耳に響き続ける。

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そして「遺作」となったフィルハーモニア管との「マーラーサイクル」ライヴCD。
1番から6番までが届いた。
どんな演奏なのかは予測がつくが(笑)、在りし日のマエストロを思い浮かべながらじっくりと聴こうと思う。



素晴らしい体験をありがとうございました。
謹んでご冥福をお祈り致します。







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【2014/07/22 13:23】 音楽 | track back(0) | comment(0) |
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